古代の楊枝のはたらき

古代の歯磨き文化を支えていたのは、洋の東西を問わず、楊枝だったと考えられています。この楊枝について詳しく記述した書物を残したのがヘブライ人でした。

その書物によれば、彼らはケゼムと呼ばれる独自の楊枝を開発しました。ケゼムは歯磨きに特化したもので、木片を削って制作されました。歯の間の汚れを取るだけでなく、何と歯列矯正まで担ったと言いますから驚くばかりです。

楊枝はへブライ人ほどではないにしろ、世界中で歯磨きの道具として重宝されましたが、日本も例外ではありませんでした。日本で出土した人骨を調べると、古代には既に楊枝を用いて歯を磨いていたことが分かるのです。

では文明の程度にかかわらず歯磨きが世界各地で行われたのは何故でしょうか。医学はそれほど進歩していなかった当時のことですから、考えてみると不思議な現象です。

実は歯磨きの起源は医学的観点ではなく、宗教的動機が背景にあったと考えられるのです。信仰に裏打ちされた儀式には身を清める動作が含まれるものですが、この動作の一種として口腔清掃が広まったのでしょう。口腔清掃は段々徹底されるようになり、遂には歯磨剤や楊枝まで作られるようになったというわけです。

さて、古代の歯磨きに楊枝が用いられたのに対して、中世はその楊枝が進化した時代でした。歯の健康を大切にする文化は古代から間断なく続き、例えばイスラム教の預言者であるマホメットも、神の前で口腔清掃することを信徒に課しました。そのため楊枝は宗教的色彩を帯びるようになり、重視されるようになったのです。

他方、ヨーロッパは中世の間は暗黒時代であったと言われるように、楊枝の進化も急速なものではありませんでした。それどころか一部の地域では楊枝すら使われていなかったと考えられています。今では考えられないことですが、当時のヨーロッパはイスラム世界や中国よりも遅れていたのです。

ではヨーロッパの人々はどのようにして歯を磨いていたのでしょうか。

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