動物から樹脂へ

歯ブラシの歴史は短く、近代以降の話ですが、大きな転換をもたらしたと言えるのは戦後の機械化と材料開発でしょう。

樹脂とナイロンでできた歯ブラシは大量生産できるため、我々の歯磨き文化は戦後に一段と発展しました。樹脂と言っても色々な種類がありますが、最初に登場したのは尿素樹脂でした。尿素樹脂はセルロイドなどが登場するまでの橋渡しでしたが、それでも動物の毛に比べれば遥かに使い勝手の良いものでした。

さて、我々が歯ブラシと聞いて思い浮かべるのは現在流通しているものですが、その基本的なフォルムは1つしかありません。適度な長さの柄と頭部、そして間に位置する頸部から成る歯ブラシです。頭部はナイロン等の植毛部に当たり、頸部は少し細くなっています。それぞれの部位をもう少し細かく見ると、歯ブラシはよく考えられた構造を成していることが分かります。今は小さい頭部であることが当たり前になっていますが、加工技術の向上がなければ実現していません。

小さくなったことの利点は、毛先のみでブラッシングできることです。短い毛で効率的に汚れをかき出せるからです。この毛もただ植えられているのではなく、複雑な構造をしています。刈り込み方、毛先の形態、太さ、長さ、硬さには意味があり、歯磨きに適した造りになっているのです。

因みに植毛部の構造を大別すると、直線型、凹型、凸型の3つがあります。植毛部の造りをさらに細かく分類すると、蜜毛型、直線段切り型、扇状型、傾斜型、波状型、房状型等があります。

それぞれについて詳しく見ていくことにしましょう。まず密毛型ですが、字義通り、毛束の密度が高いものを言います。次に直線段切り型ですが、刷掃面が直線になっているもので、口腔の隅々まで毛が届きやすいのが特徴です。

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